エピソードT(ジャブ)
◆夕飯◆

それは数年前のとある春先の出来事だったと思う。
仕事から帰宅したのは夜の7時過ぎ。なんかいつもと様子が違うなと感じいつもの定位置に座る。当時はまだ民間のアパートに住んでいて会社からもそれ程遠くないところに家はあった。いつもの我が家では通常夕飯の用意はまともにしておらず自分でご飯をよそってきて食べているのがほとんどであった。
ところがこの日に限っては違った。子供の具合が悪いのは前日からの事だったので夕飯もまともに作っていないなと思ったが、管理人はその時一体何が起こったのか一瞬わからなかった。妙な空気が家全体に流れているような錯覚に襲われ、それは目の前にやってきた。一瞬自分の目と耳を疑った。通常ではありえない事が起きたのだ。おもむろにかみさんは・・・
『ご飯食べるよね?』
と言い出したと同時にテーブルにそこそこ豪華な食事が並んだ。先程も述べたがこれはかなりめずらしい事で管理人はあまりのうれしさに疑う事すら頭に無くこの後起こる悲劇など知るすべもなく。管理人はやさしい声でこう言った・・・
『みんなもうご飯食べたの?』と言う問いに元気な声でこう答えた・・・
『うん♪』と・・・
何の疑いも無く一杯目のご飯を食べ、おかわりしに自分で行こうとしたときかみさんはこう言った。
『いいよ。おかわりね』と。さすがにここまで来ると疑い始める管理人。
「何かがおかしい?一体何があったというのだ?特別家の中は変わり映えしてないし子供たちも普通にしている。」
2杯目を食べ終え食器をかたずけようとキッチンへ行こうとした瞬間またしてもその違和感が起きた。こともあろうにかみさんは座ってていいと言う。時刻はまだ7時半にもなっていない。
かなり満腹になった管理人はタバコを吸いながら考え事をしていた。
「は〜〜ぁ、あとは風呂入って寝るだけだな・・・」と、しかしその考えは次の一言で打ち消された。かみさんが
『さあ、行こうか♪』と訳のわからない事言い出す。子供たちも笑顔で
『は〜〜〜〜〜〜い♪♪』なんて言い出す始末。わかっていないのは管理人のみ。?????
『???えっ???何?どこ行くの??』と聞く管理人にかみさんから一言
『寿司屋』と言われ管理人は何の事だか一瞬わからなかった。しかしよく考えてみると思い当たる事が・・・
子供たちは相当おなかをすかせてたみたいで管理人の食べている様子をまじまじと見ていた。それを気付かれまいとするかみさんの異様な行動。かみさんが言うには
『子供たち、具合が悪いからお寿司しか食べたくないんだって』とか言い出した。ぶち切れ寸前ですよ。
『寿司屋に行くのになんで俺に飯食わすんだよ(-_-)』ときりだしたら
『あんたがまともに寿司屋で食べたら幾らかかると思ってんのよ(-_-メ)』とか言い出した。しかも運転手は管理人。
数分で寿司屋に到着。管理人はかなり満腹状態。食べ物を見るのも嫌になってくる状態。子供たちは待ちきれない様子で
まぐろ、まぐろ。さび抜き、さび抜きと狂ったように連呼している。かみさんの計算では管理人に一人前食べられると予算オーバーになるらしくこの作戦を考えたらしいが世の中そんなに甘くなかった。
子供たちの注文をしたあとにかみさんから
『あんたも食べる?』なんぞとぬかしやがったので頭にきた管理人は
『特上のちらし(2,500円)と注文した。目の前のかみさんが
『あんた一体どれだけ食べるの?』とあきれていた。言うまでもなく寝る前にトイレから中々出てこれない管理人がそこにはいた。(ーー;)



アクセス解析 SEO/SEO対策